vol.4|学びのサロン「ライフスタイル」
日常生活とサロンワークは地続き。パフォーマンスを保つためのライフスタイルとは
20年以上の美容師人生で得た経験が、同じ時代を生きる美容師さんのお役に立てればと、技術セミナーでは伝えきれない心の持ち方や感性の磨き方について語ってくれることに。 これまで美意識や感性の高め方について語っていただきました。今回は、いつも同じテンションで仕事に向き合うためのライフスタイルについて。ルーティンの大切さ、日常の中で喜びや幸せを感じることなど、明日から実践できるものばかりです。
SHI/GE
京都府京都市上京区堀松町419 MACHI WORK 御所西3‐F
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花を飾り、四季を感じる
↑お気に入りの花器に季節の花を飾るのもルーティンのひとつ。
Vol.1で器や花器を集めることが趣味という話をしました。お店にも置いていますが、自宅にもさまざまな花器があり、花を飾ることも好きです。四季を意識し、それぞれの季節の花を選び、部屋の中でよく見える場所に飾っています。空間全体を意識して、大ぶりの枝物を飾ることも。
花を見てイヤな気持ちになる人は、ほとんどいませんよね? きれいだな、素敵だなとポジティブな感情を抱くもの。花ひとつだけでも気分が高まり、前向きになれるのです。美意識、感受性を高めるためにも花をはじめとした自然に触れることは大切だと思っています。
四季を感じること、意識することは、ヘアスタイルを考えるうえでも大切。日本は四季に合わせたファッション、ヘア&メイクを考えますよね。シーズンごとの流行予測も出てきます。季節の変化を感じ取り、お客様のライフスタイルにあわせたスタイル提案ができるといいですよね。
↑自宅にある花器の一部。季節や気分によって使い分け。
↑サロンでは色のないガラスの花器を中心に使用。最近のお気に入りは右から2番目の坂下和長さんの花器。
日常の全てにアンテナを張り、喜びを見出す
季節や自然を感じることもそうですが、自分の調子を整えるためにも幸せの数を増やすように意識しています。これは、考え方次第でできること。 例えば、掃除が嫌い、苦手という人がいますよね。面倒、大変と思ったらイヤになるのですが、「きれいになったらうれしい」と思いながら掃除をすれば、ポジティブな気持ちになるし、掃除を終えたら「きれいになって気持ちいい、幸せだな」と思えるはずです。
朝、起きたときに天気がよくて気持ちいいと思えたり、朝のコーヒーがおいしいと思えたり、通勤の道端に花が咲いているのを見つけたときうれしいと思える。 極端な話、最近は呼吸ができているだけでも幸せと感じられるようになりました。
当たり前のこと、普通と言われていることでもうれしい、幸せと感じられるかは、いつもと角度を変えて物事を見ることです。そして、「今が一番幸せ」と思って過ごすこと。そうやって毎日を過ごしていたら、きっと死ぬまで幸せ! ポジティブに変換していくと、自分で自分を幸せにできるし、自分の調子を上げることができます。自分の調子が悪いと周りにも伝染しますよね。美容師は技術職、職人ですが、接客業、サービス業なので、負のオーラをまとっているのはお客様にとって失礼だし、いいことではありません。無理やりハッピーにする必要はないけれど、いつも同じテンションでいることは大切。気持ちを安定させるためにも、「今が一番幸せ」と思うことが必要だと思っています。それに、自分が幸せでないと、目の前のお客様も幸せにはできないですしね。
香りをかぐことで自然と深い呼吸ができ、心身が整う
↑帰宅後にお香に火をつけるのがルーティン。
僕はサロンでも自宅でもお香を楽しんでいます。 香りをかぐときは、無意識に深く鼻から吸いますよね。仕事をしているときは集中しているので、どうしても呼吸が浅くなっています。香りをかぐことで自然と深呼吸ができ、自律神経が整ってリラックスできるんです。もともと香りには緊張をほぐす効果があると言われていますので、Wの効果が得られる気がします。
寝る前も、枕元にアロマオイルを1滴たらし、深く香りを吸い込むのが入眠のためのルーティン。健康維持のために睡眠は大切ですから、いい睡眠がとれるように心がけています。
サロンでも香りを意識。お客様のシャンプー後に使うスチームタオルには、ほんのりと香りをつけています。コットンにアロマオイルを含ませ、茶こしに入れてタオルスチーマーの中へ。すると、蒸気を伝ってほんのりとタオルにいい香りが移るんです。 お客様も香りをかぐことで深呼吸ができ、リラックスしていただけます。
↑使用頻度の高いアロマオイル。左からJANESCEブレンドエッセンシャルオイル アンワインダー、Cul de Sac-JAPON青森ヒバ精油、SHIGETAエッセンシャルオイル ボディー・マインド・スピリット、elemenseディフューザーオイル kiyobi
同じことの繰り返しが、心の安定と自信を生む
Vol.2では心をざわつかせないためにルーティンを決めているというお話をしました。
僕はハプニングに対して動揺しがちなので、自分でコントロールできることはルーティンを決め、毎日同じことを繰り返して心の安定を保っています。同じことでも「できる」という自信の積み重ねになりますし、自分の調子のバロメーターにもなるんです。 同じことの繰り返しが苦痛に感じる人もいますが、僕にとってはポジティブでいられる安定剤。
最近は、同じことを何十年も続ける難しさ、大切さをさらに実感しているところです。僕の実家は兼業農家です。両親は毎朝4時過ぎには農作業に出かけていました。お米を育てる作業は、毎年毎年同じことの繰り返し。大変ならやめてもいいのでは?と家族に伝えたこともあります。しかし、お米を作らず休耕地にすると再生するのは難しいそうです。
独立し、自分のお店を出そうと考えたとき、実家に近い京都を選んだのは、実家の農業を年間通して手伝いたいと思ったのも理由のひとつです。土を触ると落ち着きますね。僕が花や自然に惹かれるのは、両親の影響が大きいかもしれません。
何十年も休むことなく続けているのは、本当に素晴らしいことで、その苦労は計り知れないもの。僕も、一度はじめた美容師という仕事をずっと続けていきたい。
そのためにも、日々のパフォーマンス、クオリティを落とさないようにすること。年を重ねれば、体力も気力も落ちていきます。可動域が狭くなったなーと感じることも(笑)。いつまでも動ける体でいるために、体にいいと言われることはすぐに試しています。今は、ピラティスをやってみたいと思っているところです。
↑実家の田植えを手伝う薫森さん。何十年も続けることの大切さを小さい頃から肌で感じていた。
(2024.08.26 写真は全て薫森さん提供 取材・文/岩淵美樹)
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