vol.2|学びのサロン「整理整頓」
整理整頓は自分のスタイルを確立し、美意識を高めるためのもの
都内有名サロンでキャリアを積み、確かな技術と高いデザイン性で厚い信頼を得ている薫森さん。「東京でやり切った」と、今春、京都に移住しプライベートサロンをオープン。コンビニの数より多いと言われている美容室。競争率の高い世界で長く活躍するためには、日々新しいことにチャレンジし、成長することが大切だと語る薫森さん。自分の経験が少しでも役立てば……と、技術セミナーでは伝えきれない心の持ち方、感性の磨き方などを語ってくれることに。
今月のテーマは「整理整頓」です。
SHI/GE
京都府京都市上京区堀松町419 MACHI WORK 御所西3‐F
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@magemori
(お問い合わせや予約について、上記の薫森さん Instagramをご確認ください)
心をざわつかせないために“整える”ことがルーティンに
「部屋の乱れは心の乱れ」と言われますよね。 ごちゃついた部屋が落ち着くという人もいますが、僕はやはり整っているほうが好き。といっても、1ミリでもズレると気持ちが悪いというほど神経質ではありません。自分もお客様も不快にならないことが基準。
毎日、自分が働く空間を整えることはルーティンのひとつであり、心を整えるための儀式でもあります。美容師は技術があればいいわけではなく、接客業ですから自分のコンディションに波があるとお客様に対して失礼なので、いつもフラットな状態でいることが大切だと思うんです。使う道具の整理、経理などの事務仕事などルーティンを決めてひとつひとつこなすことが、コンディションを一定に保つために役立っています。
また、汚れや乱れが気になると心がざわついてしまいますから、目について気になるところをなくすこと、乱れて見えないような収納の仕方を考えるようにしています。この「気になるところをなくす」というのは、僕が作るヘアスタイルにも通じることです。 似合わせで僕が意識しているのは、気になる部分を見抜き、排除していくこと。今の前髪の長さが顔を大きく見せているから直したほうがいい、ふんわりしないのはその長さのせいだからカットしよう……。そうやって気になるところを改善していくと、顔と髪形がフィットするのです。
サロン内だけでなく、自分の部屋でもいいです。きれいに見えないのはなぜか、どこが悪いのかを分析することも、ヘアデザインに役立つはずです。
“見せると隠す”を徹底。自分サイズでまとめることで効率よく動ける
↑カラー剤やロッド等は棚の中に収納し、お客様からは見えないように。サロンのムードを作る雑貨は季節ごとに変える予定。(撮影/薫森さん)
自分のサロンを持つと決めたときから、内装には徹底してこだわろうと思っていました。結果、白を基調としたシームレスでタイムレスなデザインに仕上がりました。シンプルな空間だからこそ、置くものによって季節感やその時のムードを演出したいんです。夏はガラスやシルバーを中心にし、涼やかに見せようと計画中。
僕の趣味が反映されている器や雑貨、写真集などを「見せる」ことで、僕らしさをお客様に伝えることができます。ただ、その雑貨や写真集が整然と並んでいるとお客様は緊張してしまうので、あえて崩して置くようにしています。崩し方も“乱れ”にならないよう、素敵に見える雑な置き方を研究しています。
施術に使うものはすぐ手に取れるところにあるほうが便利ですが、シザーやドライヤーなど使う頻度の高いものだけ身近に置き、それ以外は壁面の棚に収納しています。すぐに片付けられず散らかってしまうとストレスになるので、特に細かいものは隠しておいたほうが、お客様に集中して向き合えます。
↑物が増えれば、それだけ整理が大変になるので、この壁面収納に納まるものしか所有しないと決めている。(撮影/薫森さん)
物は自分で把握できる量だけを置くようになりました。 特にカラー剤はベースとアクセントカラーを厳選し、ミニマムなラインナップにしています。これは僕が薬剤を選定し調合、塗布するからできることかもしれません。 これまでカラーはアシスタントに任せることが多かったので、失敗がないように一人ひとりの技量に合わせて使うカラー剤を変えていました。だから種類が多いほうがよかったのです。また、美容師が何人もいるサロンでは、多種多様なお客様に対応するためにバリエーション豊富に揃えておくことが多いですよね。
ひとりサロンの場合、たくさん揃えてもその分探す手間がかかり非効率。物が増えれば収納スペースも必要になりますし、在庫管理も面倒な作業に。カラー剤やトリートメントなど薬剤はたくさんあった方が安心するという方もいますが、必要なものだけを持つことで手数が減り、時短につながると思います。
自分ルールで物の場所を決められるのも、ひとりサロンの利点ですね。違うジャンルの物が同じ引き出し内にあっても取り出しやすくなっていれば、問題がないのです。あれどこにあったっけ?となると無駄な動きが増えるので、もちろん定位置は決めています。目を閉じていても取り出せるのが理想。
↑引き出し内の仕切りは、100円ショップや無印良品でぴったりサイズを探した。どこに何があるかパッと見てわかりやすいので、すぐに取り出せる。(撮影/薫森さん)
↑引き出しを閉めた状態。お客様から見えない裏側に引き出しがある。(撮影/薫森さん)
汚れはためない。便利グッズでこまめに掃除を
↑「サンワサプライの電動エアダスター」。amazonで購入。機能性だけでなく、スタイリッシュなルックスもお気に入り。
ひとりなので、お客様の対応をしながら掃除もしないといけません。いかに効率よくできるかを模索中ではありますが、汚れをためないことはマスト。 カット後の髪の毛をドライヤーでサッと吹き飛ばすのは、美容師あるあるですよね。原理は同じですが、ホコリ掃除には「電動エアダスター」が便利です。ネットで見つけ、よさそう!と購入し、大正解でした。僕が使っているタイプは風量が4段階になっていて、弱風にすれば音は静か。充電式だから持ち運びもしやすいし、コンパクトなサイズ感も気に入っています。ホコリはたまると固まって取りにくくなるので、営業後に必ず電動エアダスターであちこちホコリを払ってから帰ります。
床に落ちた髪の毛やゴミは、「ワルツの自在ホーキ」で集めています。髪の毛が絡みにくいので、ストレスなく掃除ができるので重宝しています。動きもスムーズ!
↑「早川工業のワルツ自在ホーキ」と、「山崎産業のブンチリ」。ちり取りは3〜4個試して、ようやく使いやすいものにたどり着いた。
物は月日とともに変化していくものです。経年変化することと、汚れることは違います。汚れは美しくありません。できるだけきれいな状態を保ちたいから、マメに掃除をするんです。時間を無駄にはできないからこそ、ルーティンにして日々整えておきたいのです。
僕の中で整理整頓は、自分の思い描く生活スタイルを作り上げること。暮らしのベースであり、美意識を高めるための行動のひとつだと考えています。
(2024.06.19 撮影/廣江雅美 取材・文/岩淵美樹)
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