緑豊かな京都御苑の西側、レンガ風ビルの3階に2024年4月にオープンした「SHI/GE」。 アシスタント時代から異彩を放ち、スタイリストデビューすると瞬く間にスター美容師として注目を集めた薫森正義さんのサロンです。 「東京でやり切った」という薫森さん。新しいスタートを切った直後に、今の心境や今後の展望についてうかがいました。
Profile
薫森正義/しげもり・まさよし
1976年生まれ。滋賀県出身。大阪ベルェベル美容専門学校卒業後、上京。都内数店舗にてサロンワークに従事。2024年4月、京都にプライベートサロン「SHI/GE」をオープン。レザーカットを得意とし、その技術力とセンスの高さからセミナーのオファーが絶えない。
SHI/GE
京都府京都市上京区堀松町419 MACHI WORK 御所西3‐F
Instagram @magemori
(お問い合わせや予約について、上記の薫森さん Instagramをご確認ください)
美容室激戦区の東京・表参道で長きにわたり活躍してきた薫森さん。彼に任せれば誰もが可愛くおしゃれになれると信頼も厚く、常に予約がいっぱい。女性誌のヘア企画の常連であり、業界誌やコンテスト、セミナーなどでも引っ張りだこ。なぜ、東京を離れようと思ったのでしょうか。
2年ほど前、一人でやってみるのもいいかもと急に思い始めました。それまでは、自分のお店を持とうなんて考えたこともなかったのに。
東京で働きたい、雑誌の撮影やショーをやってみたいといった若い頃に思い描いていたことはだいたい叶えられたけれど、この先さらに成長できるのか?と考えるようになったんです。40代後半になり、ずっと同じことを続けていても停滞するだけ。思い切って働き方、環境を変えるしかないと思ったのがきっかけです。
東京で独立したら、お客様もついてきてくれるだろうし、撮影などサロンワーク以外の仕事も変わらずできるだろうけれど、それでは何も変わらない。多少無理をするくらいのチャレンジでないと成長には繋がらないので、東京を出ようと決意しました。
滋賀県出身ですし、大阪の専門学校に通っていたので京都は全く知らない土地ではないけれど、東京ではない場所で勝負をしたかったんです。
キャリアがあるとはいえ、不安はなかった?
もちろんありましたよ。美容師はハサミがあればどこでもできると言われるけれど、お客様がいなかったらハサミがあっても意味がないですよね。生活もできない。
インスタで集客をする時代なので、オープンまで僕なりに工夫しながら発信を続けました。ただ、ずっと新規をとっていなかったので、果たしてどれだけのお客様がいらしてくれるのかは未知で…。オープン日が決まり、予約受付をしたら2カ月分が3時間で埋まったんです。ホッとしました。
働き方を変えることのひとつとして、一人でやってみようと思ったのですか?
そうですね。アシスタントを雇うこともできたけれど、新しい土地でまずは一人でやってみるチャレンジを選びました。ゼロからどれだけできるのか、自分の力をもう一度確かめたかったんです。 東京では1日20〜25人担当していました。アシスタントがサポートしてくれていたからできたことです。
この髪質ならこうカットしたほうがいい、このお客様にはこっちの方が似合うなど瞬時に判断できるスキルがどんどん身についていったことも理由のひとつ。ただ、経験が増えれば増えるほど、どこか流れ作業的になっていたことも否めません。先ほどの話と同じ、無理をしなくなっている自分がいたんですよね。
実際、一人でやってみての気づきはありますか?
ありきたりですが、たくさんの人に支えてもらっていたんだなということを再確認できました。 ツールや商材の進化を体感できたことも大きな気づきです。
自分がアシスタントでシャンプーをしていたときのシャンプー台とは異なり、最初は戸惑いました(笑)。それと、今の人は頭皮がこっているといわれるけれど、シャンプーをするとより実感しますね。 お金の管理もあるし、毎日やることは盛りだくさんで大変ですが、何かしらの発見があるので楽しくやっています。
サロンは薫森さんらしいおしゃれなアイテムが並び、ゆったりとした空間で居心地がいいですね。
ありがとうございます。天井が高いので圧迫感がなく、広く感じられるのではないでしょうか。
内装は @sasayatakatoさんにお願いしました。シンプルに見えて、細部にめちゃくちゃこだわっています。お店を出すと決めたときに周りから、「内装費は抑えたほうがいい」とよく言われたのですが、1日の大半をお店で過ごすのだからこだわりたいと思ったんですよね。自分が理想とする空間じゃないとテンションが上がらないでしょ? だから、好きな作家さんの作品を並べています。
↑エントランスのドアはフロスト加工にすることにより、視線は遮りながらも人気を感じるように。
↑西側には大きな窓が。「夕暮れも好きな時間です」と薫森さん。(撮影/薫森さん)
↑木工作家・盛永省治さんの作品や、フラワーベース、お香など好きなものに囲まれた空間に。
時間の流れもゆっくりのような気がします。静かな環境がいいですね。
目の前には京都御苑があり、緑豊かな環境も気に入っています。京都の中心地でありながら、人通りも多くなく静か。窓を開けていると、いい風も入ってくる。空が見えるっていいですよね。
カラーやパーマは待ち時間があるので、外を見ながらちょっとボーッとするときも。東京では味わえなかった時間です。
↑ビルの1階にある表札。「MACHI WORK」の表札を目印に、左手階段を上がった3階です。
↑京都御所がある京都御苑。サロン帰りにふらりと立ち寄りたい。(左撮影/薫森さん)
新生活がスタートしたばかりですが、今後の目標を教えてください。
今、僕がやりたいと思っているのはオーダーメイドのセミナー。これまで経験してきたことを美容業界に還元したいんです。
大勢の前で技術を教えるのではなく、一人一人の悩みに合わせてマインドから変えていきたい。セミナーを受けたということに満足してしまう人もいるので、教わったことが身についているのかをチェックするために、1カ月後、半年後…と継続したセミナーを行ってきたいと考えています。
最近はフリーランスになる美容師も多いですよね。働き方改革が美容業界にも起こっていて、選択肢が増えたのはいいことだと思います。京都のお店ができるまでシェアサロンで働いていたのですが、周囲を見ているとフリーランスはまだまだ難しい状況にあると感じました。
一人は自由ですが、モチベーションを保つことも大変だし、技術を磨くことも自分から進んでやっていかないと伸び悩んでしまう。ある程度、経験を積んでいても新しいことをキャッチしていくアンテナをはっていないとなかなか成長はできない。
フリーランスの人たちも含め、もっといろいろな技術を学んでほしいし、接客やセンスも磨いてほしい。美容師って楽しいよねって思ってもらいたい。
そのためのセミナーを日本だけでなく、いずれは海外、まずはアジア圏でやりたいと考えています。
「SHI/GE」も、1年後には1席増やせるようにしたいですね。目標がなくなったら成長はしないので、何をしたいのか、どうなりたいのかを思い描くようにしています。
街のいたるところにインスピレーションを受ける場所がある、それが京都
美術館巡りなど、アート好きで知られる薫森さん。京都に来てからは、どうですか?
東京からいらっしゃるお客様も多いので、今はサロン帰りに立ち寄れるお店探しをしています。街歩きをしているなかで出会ったのが、日本茶専門店のYUGENさん。
1階がカフェになっていて、3階がギャラリーに。僕は器も好きなので、よく通っています。ここで購入した器がサロンにもあるので、チェックしてみてください。
↑お店の方とも意気投合。
↑取材の日にいただいたのは、2種類のおはぎと抹茶のセット。目の前でお茶をたててくれる。
↑3階のギャラリーには、藤田永子さんや尾形アツシさん、荒川尚也さんなどの作品が並んでいる。
YUGEN
京都府京都市中京区亀屋町146
075‐708‐7770
https://www.yugen-kyoto.com/
Instagram @yugen_kyoto
スズショウ・アンナのカットクロス は00711オフシロ、カラークロスは12203クロを使用中。「クロスのロゴはさりげない感じにしたかったので、横幅10cmくらいです。毎日営業後にお洗濯をして、窓辺にかけて帰ります。朝までに乾きますよ。このクロスは生地の厚みと肌ざわりが気に入ってます。」と薫森さん。
(2024.05.23 撮影/廣江雅美 取材・文/岩淵美樹)
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