wanokuni every
2時間あまり茶園を案内してもらい、事務所に戻ってお茶を淹れていただいた私。「あー、やっぱり美味しい。なんてすっきりとした味わいなんだろう」が率直な感想でした。後半は商品にフォーカスして、美味しいお茶の淹れ方についても伺いました。
吉川
実際に茶園をご案内いただいて、岩田さんが「茶園も自然環境の一部」と考え、地質や標高、方角など、異なる立地条件に見合ったお茶作りをしていることがとてもよくわかりました。
岩田
はい。世界中でお茶が作られている中で、「月ヶ瀬だからこんなお茶になる」、ひいては「月ヶ瀬健康茶園のあの茶山だから、あの茶畑だからこうなる」と言えるお茶を模索しています。23年を経て、区画ごとの個性もしっかり把握できるようになってきました。
吉川
案内していただいた茶山には、樹齢100年の在来種もあって驚きました。
在来種は、品種茶が普及する前の時代に植えられたものなので、まさに月ヶ瀬ならではです。お茶の生命力を信じて規格品ではないお茶を作るのが、自分の役回りなのかなとも思っています。
↑眺めのいい山頂から広がる傾斜地では、樹齢100年の在来種が今も勢いよく現役。
吉川
では、具体的にお茶を紹介していきたいと思います。
岩田
商品は3つのシリーズに分かれています。1つは「自然栽培茶」。もう1つが「有機栽培茶」。ほかに耕作放棄された茶山を再生させて作った「つづける畑茶」がありますが、こちらは現在卸専用になっています。
吉川
園内で製茶もしていらっしゃいますが、荒茶の工程までやるというのはどこのお茶農家でもすると聞きましたが、岩田さんのところは、最終仕上げまでやっているのですね。
岩田
はい。園内には荒茶工場、茶保管庫、仕上げ加工場があって、袋詰めまで作業して出荷しています。荒茶というのは、摘んだ茶葉をすぐに蒸して揉んで乾燥させる工程のことですが、どの山の茶をどうブレンドするか、毎年考えるのがまた楽しくて。うちは自分たちで煎茶・ほうじ茶・紅茶に製茶して、お届けしています。「こんな風景のところでお茶を作っていますよ」ということを楽しく伝えられたらいいなと思って、パッケージには吉川さんにお渡しした手描きマップのイラストを使っています。
↑(左)【新茶】自然栽培 煎茶 50g 。約500万年前の古琵琶湖層の地質で、ゆっくりと育つ樹齢70年の在来種を使った煎茶。(右)自然栽培 煎茶 ティーバッグ 2g×12P 。土質と地質の年代が異なる2つの茶山のお茶をブレンド。
↑(左)自然栽培 煎茶ほうじ やぶきた 50g 。 収穫した若芽を森の中で一昼夜、萎れさせてから製茶した煎茶を浅く焙煎。ほのかに甘い香りと体へのやさしさを併せ持っています。(右)自然栽培 煎茶ほうじ ティーバッグ 2g×12P 。焙煎によって現れる甘くフルーティーな香味と、透明感のある黄金の水色が特徴です。
吉川
ティーバッグもあっていいですね。それこそ仕事中や水筒に入れて持ち歩くのに。
岩田
ティーバッグは現代のライフスタイルを考えて、マグカップやマグボトルで楽しんでいただけたらと。熱湯を入れてからティーバッグを入れるのが、香りを引き立たせるコツです。ぜひお試しください。
テロワールを紅茶でも表現。 世界的にもファン多し !
吉川
前半では触れませんでしたが、岩田さんは日本有数の紅茶生産農家としても知られていて、海外にも多くのファンがいます。
岩田
2001年に会社を辞めて月ヶ瀬に戻りましたが、紅茶を作ってみたいというのが就農のきっかけになりました。大学時代、友人から家業について聞かれ、「茶農家なのに、なんで紅茶は作らないのか」と言われ、それもそうだなぁと思ったことがありまして。その後、就職して仕事で行ったイギリスのオーガニック認証団体の事務所で、紅茶を出されて、それがものすごく喉越しが良くて美味しくて、紅茶の美味しさを知りました。是非ともやりたいという気持ちもあって戻りました。
吉川
認証団体は、イギリスのソイルアソシエーションですね。それは、土を大切にしている世界一とも言える団体の事務所で、最高の紅茶を飲んでしまったのですね。感動したでしょうね。紅茶も緑茶も原料は同じ茶葉からですものね。発酵の仕方が違うだけ。緑茶は不発酵茶で、紅茶は発酵茶。
↑【新茶】有機紅茶 月ヶ瀬春摘み(フレッシュタイプ) 40g 。 5月に収穫した緑茶品種(やぶきた等)の春摘みの新芽の爽やかで甘い香りを活かして、紅茶に加工。清涼感のある香味です。
吉川
日本で栽培・加工された紅茶は「和紅茶」と呼ばれたりして、カフェのメニューにもわざわざ「和紅茶」って書いてあったりしますよね。
岩田
緑茶のイメージが強い日本ですが、昭和30年代、日本は紅茶の輸出国で、しかも隣村には大手メーカーの紅茶工場があって、月ヶ瀬でも紅茶が作られていたことがわかりました。そして日本には、日本らしい紅茶があってもいいはず。「やってみよう」と、Uターンでこっちに戻って就農と同時に紅茶作りにも着手しました。
吉川
ああ美味しい。さわやかで雑味がないすっきりとした味わいですね。
岩田
月ヶ瀬の茶葉は小ぶりなので、発酵が進むにつれてとどんどん香りが出るというよりは、萎凋(いちょう)の時にとても良い香りが出ます。萎凋の時に出た香りを壊さないように製茶する方法を大事にしています。ストレートで飲んでいただくと、和食や和菓子にも合います。
吉川
萎凋とは。
岩田
葉っぱの水分を蒸発させる作業のことです。
岩田
水分を均一に蒸発させるのはなかなか大変ですが、紅茶は萎凋の時間や仕方によっていろいろな香りが出せるんです。ぜひ紅茶もお楽しみいただきたいのですが、今日は煎茶とほうじ茶を熱湯で、香りよくすっきりと味わえる淹れ方をお伝えしたいと思います。吉川さんに催事でお会いして、初めてうちのお茶を飲んでいただいた時もこの淹れ方です。
吉川
熱湯!? 湯ざまししないんですか。
岩田
はい。ぜひ、お家でも試してみてください。急須は陶器より磁器、茶葉が十分に開く空間のあるものをおすすめします。
(ここで岩田さんに習った淹れ方は、自宅ですぐやってみましたので、最後にご紹介します)
「月ヶ瀬健康農園」のお茶に 出会えてよかったと、心から。
吉川
岩田さん、今日は本当にありがとうございました。長い時間お邪魔致しました。最後に読者のみなさんに何かコメントを。好きなことをお話ください。
岩田
世界のお茶の産地もいろいろ訪ねましたが、インド洋でできた雨雲がエベレストにぶつかって、アジアモンスーンとして雨をもたらすところにお茶の産地があります。インド、中国、台湾、そして日本、最後は月ヶ瀬。エベレストが今より高かったら、雨雲は全部インド方面に流れてしまい日本には来ません。またエベレストが今より低かったら、モンゴルの方に抜けてしまいそれでも日本に来なかった。そんなお茶の産地にまつわる背景にもロマンを感じています。
吉川
星のめぐりあいのような、ものすごいきらめきを感じます。そんなことを考えながら岩田さんはお仕事をなさっているのですね。やっぱり他の人とは違う!と思います。だから岩田さんのお茶は美味しいのだと思います。
岩田
こちらこそ、本日はありがとうございました。仕事の合間にゆっくりお茶を飲む時間はないかもしれませんが、水出し茶ならペットボトルの感覚で水分補給していただけますのでぜひ。タンブラーにティーバッグを入れるだけです。
↑ティーバッグの煎茶は、水出しにもおすすめ。緑茶は水出しにすると、カフェインが出にくくなるため、まろやかな味わいになります。神経をリラックスさせる「テアニン」も摂りやすくなります。
岩田さんに教えていただいた、「煎茶」の美味しい淹れ方
1. 急須に約5gの茶葉を入れます。
2. 沸騰したお湯を茶葉がひたひたに隠れるほど(約50cc)入れます。
3. 3秒待ち、ガラスの容器などに注ぎ切ります。
4. 2・3をあと5回繰り返します。
5. 湯呑みに注ぎ分けます。
6. 二煎目以降は、熱湯を100〜200cc入れて数分待って、ガラスの容器に注ぎ切ります。
吉川
このワイルドな淹れ方で、苦味なし ! えぐみなし ! 味よし ! すっきり ! そしてとろりとした緑色ではなく、茶山にそぐう自然な色。しかもカテキンによる強い抗酸化作用や抗菌作用、リラックスさせるテアニン、フッ素、豊富なビタミンCなど、これぞ薬草の頂点。体が喜ぶのもわかりますよ。3秒なら、茶葉も火傷しないそう!3秒ですよ。
皆様、今回は、熱が入り過ぎて、たくさん書き過ぎました。長い文章にお付き合いくださりありがとうございました。月ヶ瀬のお茶、ぜひお試しください。
前半 (vol.14-1)の記事はこちら
2023.7.19 (文/野村始子 写真提供/月ヶ瀬健康茶園株式会社、吉川千明)
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