【連載 vol.12 】東京「 KIGO」山笑う アロマバスソルト

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Profile
MAGNOLIA ディレクター・パフューマー
一般社団法人アロマリーディング協会理事
笹本　英恵（ささもと はなえ）さん 

趣味としてアロマテラピースクールに通ったのをきっかけに、香りの世界へ。吉川千明さんからも植物や香りについての叡智を学び、ジュリーク認定セラピスト育成スクールの立ち上げに従事。独立後はアロマと紅茶のセレクトショップ matsuricaを開店。現在は2021年に設立したMAGNOLIAのディレクターとして、香りを軸にした活動を幅広く行なっています。モットーは「心を優しく、肌を美しく、体を健やかに」。代表的なプロダクトは12星座と香りをテーマにしたアロマルームスプレー「STAR SIGN AROMA」と、香りで心の状態を読み解く「アロマリーディングボトル」。

故郷や　どちらを見ても　山笑う。

この句をご存じでしょうか。明治時代の俳人、正岡子規が故郷愛媛を思って詠んだ句です。季語は「山笑う」。春になって草木が芽吹き、花が咲いて山が明るく色づいた様子を「笑う」と言う言葉で表現したものです。

山の風景を見たときに、そんなふうに捉える日本人の感性。美意識。素敵だと思いませんか。今回はその春の季語「山笑う」を商品名に用いてアロマバスソルトをクリエイトした香りの専門家、MAGNOLIAの笹本英恵さんを訪ねました。



↑東京都内、代々木上原駅から徒歩1分。アクセスの良い場所に位置するMAGNOLIA PRESSROOM ＆ SHOP。


ブランド名が「KIGO」で、商品名が「山笑う」。
入浴剤らしからぬネーミング。

笹本
みなさま、はじめまして。笹本英恵と申します。本日、吉川さんにお越しいただいたこの場所は、私が手がけるMAGNOLIAの全アイテムをご覧いただけるプレスルーム兼ショップです。3月にオープンしたばかりで、それまでは15年間同じ場所でアロマと紅茶とオーガニックコスメを中心としたセレクトショップを手がけていました。

吉川
15年間、お疲れさまでした。笹本さんと私はそれ以前からの付き合いで、一緒にお仕事をしていた時期もありました。当時からただならぬアロマ好き。イベントでポップアップショップに立つにしても、仕込みが全然違う人でした。勉強の深さにも私は信頼を寄せてきたのですが、どうやら私は笹本さんに「自分でも何か作って、売ったら」と言ったとか。そこは全く覚えていないのですが。



笹本
覚えていないって(笑)。「知識と感性を活かして、作りなさい」って。その一言がきっかけで、今ココです。香りと心身のケアをつなぐ製品の発掘と開発に努めてきました。ご紹介させていただくバスソルトの「山笑う」は、「KIGO」というブランドのファーストプロダクトです。日本の美意識に寄り添うブランドとして2021年9月に生まれました。

吉川
ブランド名が「KIGO」で、商品名が「山笑う」。入浴剤とは思えないネーミングですけれど、緻密な調香は笹本さんそのもの。ぜひご紹介したいと思いました。

吉川
多いって、どれくらい？

笹本
95％くらいの方が山笑うをご存じなかった。ただその現実によって、自分の方向性をはっきりせさることができました。日本の文化や感性の豊かさを香りを通して伝えていく。それが自分の人生でやりたいことだと気づいたんです。そして初めは2022年春の限定商品として作ったブレンド精油でしたが、より心と体を癒すアイテムにしたいと考えてアロマバスソルトにすることを決めました。製作過程でデザイナーと話しを重ねる中、季語と香りをテーマにしたブランドとして育てていこう、いつか世界に届けたい！という思いからブランド名「KIGO」が生まれました。
 

香りには力がある。
だからイメージだけで選ぶのはもったいない。

吉川
物語がありますね。しかも「アロマリーディング」の第一人者の笹本さんらしく、香りの叡智がしっかり詰まってる。アロマリーディングというのは、香りを使って心の状態を読み解いてケアを行なっていく手法。「山笑う」にも、その要素は多分に入っていると思われる調香ですね。

笹本
はい。春のイメージの香りではなくて、春の時期に嗅いでほしい香りを作りました。なぜなら春は心がざわつきやすいから。華やかな一面、新しい生活に緊張したり、人々が動き出している中で自分だけが取り残されているような不安を感じたり。肌のみならず、心もダメージを受けやすい季節なんです。

吉川
リアルに嗅いでいただけないのが、オンラインの辛いところですが、香りのうつろいが見事だと思いました。鍵となるのは最初に来るゼラニウムの優しい香り。続いてベルガモットやグレープフルーツの爽やか系がやってきて、その後に続くのはブラックスプルースやひのきがもたらす森の香り。

笹本
お風呂の中でひと息ついて、深い呼吸へ誘えるようにデザインしました。エステやマッサージ前の足浴にもお使いいただけたらと思います。嗅覚は五感の中で唯一、脳に直接伝わる感覚です。嗅覚が香りをキャッチすると、感情や本能を司る大脳辺縁系や自律神経を司る視床下部に情報が伝わって、自律神経や内分泌系、免疫系のバランスが整っていく効果が期待できます。
 

吉川
精油の成分は経皮吸収によっても体に働きかけることもわかっていますね。呼吸で香りを取り込みながら、全身に働きかける「お風呂アロマ」、ぜひお試しください。しかも「山笑う」は、使っているソルトがまたすごい。
 

2種類のソルト効果で
湯あたりの良さと温まりの違いは歴然。


↑シャークベイ塩田。シャークベイは生きた化石と呼ばれるストロマトライトが40 億年も前から生息し、現在も生きている珍しい湾。

笹本
ソルトはシャークベイソルトとエプソムソルトをブレンドしました。なめらかな肌あたりで体を温め、お肌からミネラルとマグネシウムをたっぷり吸収できる設計です。シャークベイソルトは西オーストラリアの世界自然遺産シャークベイの海水から、太陽と風の力だけで作られる天然塩。写真はシャークベイの塩田ですが、まだ行けていません。

吉川
プラス、エプソムソルトですからね。エプソムソルトは日本でもここのところちょっとしたブームですけれど、塩だと思っている人がいます。塩ではありません。正しくは海水に多く含まれている天然ミネラルの結晶。別名は硫酸マグネシウム。薬としても使われ、ヨーロッパでは数世紀に渡って使われ続けてきた実績あるモノです。美容的にはお肌にハリと潤いを与え、すっきりと汗をかくことでリフレッシュ効果が期待できますね。
 

素材は世界規模。製造は日本。
施設の方々にお願いして少量ずつ丁寧に。

吉川
ノーマライゼーションへの取り組みもご紹介しておきましょうか。

笹本
ぜひ。新潟の障害者施設で製造に携わってくれている方々の協力あっての「山笑う」です。使用している精油は毎回私が調香して工場に送っていますが、植物から採取する天然の精油は天候や土壌の環境で香りが変化します。なるべく同じになるよう、ロット毎に配合のバランスを微妙に変えているのですが、先日、こんなことがありました。作ってくれている人たちが私の元に駆け寄ってきて、目をキラキラさせながら「今まで作った中でこれのにおいが一番好き！」「みんないいにおいだって話してるよ」と言ってくれたんです。偽りのないストレートな言葉に心の底から嬉しかったです。それ以降、調香した精油を工場に送る前に、「今回もみんなが作業しながら、いい気持ちになりますように」と祈りを込めるようになりました。「山笑う」の次は「山滴る」、その次は「山粧う」「山眠る」とKIGOのラインナップを増やし、製作をお願いし続けて、彼らの輝きにも触れ続けようと、改めて気持ちを強くしました。

吉川
社交辞令では感じ得ない、嬉しい評価ですね。
 

パッケージは日本的に。
掛け軸を思わせる佇まいには仕掛けを。


↑KIGO アロマバスソルト 山笑う 250g ￥4,400（税込）

吉川
パッケージデザインについてお伝えしないとですね。私はこの日本的な静謐な佇まい、とっても好きです。

笹本
日本的な美しさを意識しました。帯は掛け軸のイメージで山が笑う姿を表現。

吉川
そしてこの帯、取り外して折るとバスソルトをすくうスプーンになるという。

笹本
バスソルトをすくうスプーンはつけたいけど、プラスチックは使いたくない。「はなさんはいつも環境の話をしていたから、これはどうですか？」とデザイナーが提案してくれた仕掛けです。日本的な美しさ、環境を大切にする心、折り紙的着想など、ブランドコンセプトが詰まったデザインになりました。

吉川
さりげないサスティナビリティへの取り組み。でも、日本的な美しさを意識したのに、「KIGO」も「YAMAWARAU」も漢字にしなかったのは、なぜ？　理由があるのですか。

笹本
そうですね。製品を通じてさりげなくサスティナビリティやノーマライゼーションについて伝えていきたいです！他にも伝えたいことが詰まっているのですが、実は表のデザインにも意図があるんです。日本に来てくれた外国人観光客の方々も意識しました。「日本の春、よかったなぁ」という気持ちでお土産にして日本の感性や日本語の美しさに触れてもらえたらと。声に出した時の日本語の響きを感じてほしかったので、あえて漢字は使わずにローマ字表記をしています。

吉川
season wordではなくKIGO、mountain laughではなくてyamawarau。日本語の音の響きを覚えてもらうための秘策。なるほどです。今後はホテルのアメニティなどにも選ばれていくのではないかと思っています。そして今日ご紹介した内容が、この記事を読んでくださったみなさんにも有効で、サロンのお客様との話題にもなれることを願っています。

笹本
春はこれからが本番。心のざわつき、スルーせずにどうぞご自愛を。今回はこのようなご紹介ができたことに、感謝申し上げます。

吉川
こちらこそ。最後、先ほど少し触れたアロマリーディングの紹介を簡単にして終わりにしましょうか。笹本さんの真骨頂でもありますから。

笹本
(笑)。アロマリーディングは８本の香りのボトルを嗅ぎ比べて、反応した香りから今の自分の心を読み解くという心のケアのツールです。2013年に体系化しました。『選ぶ香りに意味がある』というコンセプトは、カウンセリングだけでなく、私の開発した製品や接客を通じて広めてきました。私が設立した一般社団法人アロマリーディング協会では、さまざまな講座も開かれていますので、ご興味がありましたらお問合せください。カウンセラーの育成講座も行なっています。今日は本当にありがとうございました。

認定アロマリーダーによるアロマリーディングについて、お申し込み・問合せはこちら。
https://www.aroma-reading.com/counseling/

2022.03.20（撮影・文／野村始子　写真提供／MAGNOLIA）

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