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日本列島、夏真っ盛り。紫外線対策が欠かせない毎日ですが、みなさんは「タマヌオイル」をご存知でしょうか。古くから東南アジアや南太平洋の島々で、さまざまな肌トラブルに使われてきた植物オイルです。原料になるのは、テリハボク(照葉木)という常緑樹の種。今回はこの種から抽出したタマヌオイルをベースにしたブランド「ナウレ」の化粧品をご紹介したいと思います。沖縄の宮古島の北に位置する周囲10kmほどの小さな島に思いを馳せながら、読みすすめていただけたら嬉しいです。
防風林だけにしておくのはもったいないテリハボク。秘密は種に。
まずは、「どのようにしてタマヌオイルが作られるか」から話を始めましょう。上の写真はテリハボクの実と種です。年に2回、春と秋につく実は直径3cmくらいあり、熟すと赤茶色に変化(写真右上)。果肉は池間島ではヤエヤマオオコウモリのご馳走になるそうです。そしてこのヤエヤマオオコウモリが実によい仕事をしてくれます。上手に果肉だけをかじり、硬い殻に覆われた種を落としてくれるからです(写真右下)。その種を拾い集め、殻を割って内部の仁(核)を取り出し搾油したもの。それがタマヌオイルです。
1粒の種は高さ20mもの大木になります。しかも幹は太く根は深く。海水にも負けず、爆風に煽られてもワサワサと揺れるだけの頼もしい存在です。そのため「防風林」や「防潮林」として重宝がられてきた歴史があります。日本の池間島もそうですが、東南アジアや南太平洋の島々のようにオイルが搾られることはありませんでした。落ちた果実は歩くときにすべってあぶないからと、捨てられる運命にありました。
ゴミが宝に! メイドインジャパンの上質なタマヌオイル。
ところがここへ来て、日本にも嬉しい変化が起こっています。ジャパンメイドのタマヌオイルが作られるようになってきたのです。ご紹介の「ナウレ」も宮古島の離島、池間島から生まれたタマヌオイルのコスメブランド。ゴミとして集められていた種が、今は太陽の光と風を浴びながらオイルになるのを待っています。
ちなみに20mlのオイルを搾るのに約100粒の種が必要です。たわわに実るとはいえ、オイルになるのは選ばれし種。ここからはその種の選定からオイルの製造、販売までを行う三輪智子さんに補足していただきながら、池間島のタマヌオイルの魅力をお伝えしていきたいと思います。
Profile
ヤラブの木
代表
三輪 智子(みわ ともこ)さん
1987年生まれ。神奈川県出身。大学卒業後、茨城県の環境NPOを経て2012年に沖縄県宮古島に移住。池間島の地域福祉NPOにて島おこし事業に参画。2015年頃から防風林の再生を目的に始めたテリハボクの苗木作りを機に、池間島産タマヌオイル(テリハボク種子油)の搾油に着手。2019年にコスメブランド「naure(ナウレ)」を立ち上げ、島のおばあたちと共に新しい風を起こしながら、森のメンテナンス、耕作放棄地の再利用、島の中学生たちのキャリア教育にも取り組んでいます。
「はじめまして。ヤラブの木の三輪智子と申します。移住して9年が経ちました。島ではテリハボクのことを方言で「ヤラブ」と言います。屋号はそこから取りました。美しい自然に負荷をかけることなく、島の資源から新たな産業が生まれたことを本当に嬉しく思っています。「ナウレ」のタマヌオイル、どうぞよろしくお願いします。ちなみに、私たちはコウモリがかじった跡のある種は、安全な種を選ぶポイントにもなると考えています。近隣の畑で農薬を散布していたりすると跡が見られないからです」(三輪)
黄金色に輝くタマヌオイル。1滴1滴ゆっくり、じっくり。
さてみなさん、これが池間島産タマヌオイルです。うっとりするほど美しい黄金色をしているの、伝わりますか。搾油はコールドプレスという有用成分を変化させない製法で抽出します。テクスチャーはなかなか濃厚ですが、伸びがよく肌への浸透も非常に良いオイルです。香りはナッツぽくて、スパイシーな香りもします。
そしてこちらがブランドを代表する「ピュアオイル」です。私はこのオイルに「サスティナブルコスメアワード2020」という、化粧品をサスティナビリティの観点で評価する場で出会いました。審査員として参加していたのですが、サスティナビリティの観点はもちろん、クオリティにも感服し一票を投じました。若い世代を応援していく年齢となった今、一人の女性が離島に移住して、真摯に取り組む姿にも感銘を受けました。土地の人のなかに入っていくのは大変なこと、勇気がいることです。
「ありがとうございます。おかげさまで審査員賞を受賞することができ、島の人たちにも喜んでもらえました。移住して6年くらいは、お年寄りの知恵や技術を次世代へ受け渡しする場を企画して運営するなど、さまざまな島おこしにチャレンジしました。でも特産品や仕事を生み出すまでには至れず、模索していました。環境に負荷をかけず、むしろ豊かにするような仕組みづくりはできないものか。そんな中で始まったのがテリハボクの苗木作りでした。一番の狙いは海岸沿いの防風林を再生させて、海の豊かな環境を支えることでしたが、おばあたちが庭先で育てた苗木を買い取る仕組みが作れたらという思いもありました」(三輪)
テリハボクは苗木が育つのに時間がかかる植物だった…。
「魚付き林」と言われるように、森は海に栄養分を供給するだけでなく、沿岸の森は直射日光を遮断したり、水温の急激な変化を防いだり。海を守るには豊かな森が必要。森林が手入れされないと漁獲量が減るとも言われています。島民の高齢化で手が届かず、荒れてしまった場所もけっこうあって。ただ苗づくりは、おじいおばあの収入につながりませんでした。テリハボクは種から苗木に育つのにものすごく時間がかかる植物だったんです」(三輪)
確かにテリハボクは20mにもなる大木ですが、成長はゆっくり。そこを逆手に取って観葉植物として流通していたりもします。葉がつややかでとてもきれいな植物ですよね。なんといっても「照葉木」ですから。
「そうなんです。苗木ビジネスはうまくいきませんでしたが、テリハボクの種から採れるオイルが、実は南太平洋の島々で伝統薬として使われていることを知りました。バヌアツをフィールドにしている学者さんが教えてくれたのです。切り傷、やけど、虫刺され、湿疹…、皮膚だけでなく筋肉痛やリウマチのケアにも使っていると」(三輪)
クラウドファンディングでオイルの商品化を実現。
「それからは種を磨りつぶしてみたり、搾ってみたり。調べていくうちに、池間島のテリハボクからも上質なオイルが採れることがわかりました。これは島の人たちが関われる産業になる!思いは確信となっていきました」(三輪)
まさにピンチはチャンス。タイミングもとても良くて、タマヌオイルは今、改めてその実力が見直され、世界各国で注目されています。ちなみに下の写真左は、池間島産タマヌオイル100%の「ピュアオイル 20ml 」。右は8種類の植物オイルと4種類の天然精油をブレンドした「ボディオイル 100ml」です。日焼け後の肌にもおすすめですよ。
「商品化に至れたのは、クラウドファンディングの成功が大きかったです。2018年9月、池間島の豊かな自然と暮らしを守るタマヌオイルづくりのプロジェクトを多くの方に知っていただき、ご協力を得たいと思い行いました。私自身に化粧品に関する知識がほとんどなかったため、多くの方のお知恵やアドバイスをいただきながら一緒に商品化を進めたい思いもありました」(三輪)
長引くコロナ禍。残念ながら私はまだ池間島に行けていませんが、こうやって力のあるものが日本にあるのは喜び。三輪さんのような世代が中心になって地域を起こし、素晴らしい植物を生かしてくれるのも嬉しい限りです。島のみなさんも私と同じ気持ちだと思います。
「ありがとうございます。今、池間島のおばあたちは大忙しです。硬い殻をトンカチで割って、種を取り出す作業をお願いしているからです。仕事として発注して、買い取るスタイル。おしゃべりしながらも、手は動く動く。どれだけ割れるか競争しあいながらやってくれています。「入れ歯を買った」とか「孫に小遣い送った」とかお給料の使い道も報告してくれます」(三輪)
続々と明らかにされているタマヌオイルの有用成分。
いかがでしょうか。 使っていただくことが応援にもなる、ナウレのタマヌオイル。しかもタマヌオイルの有用性は、さまざまな研究から明らかになっています。なかでも注目は「カロフィロリード」。かゆみ、あれ、日焼け、炎症、傷、ニキビ、ニキビ跡、におすすめの天然の非ステロイド系抗炎症成分です。
そして、もちろん保湿効果も。赤ちゃんにもどうぞ。お母さんの手から赤ちゃんのお肌につけてあげることが、お母さんのハンドケアにもなります。子育て中は毎日何度も手を洗うし、私も手荒れに悩んでいた時がありました。手を人一倍使うお仕事の美容師さんならなおさらだと思います。
ただ、タマヌオイル は20℃以下になるとだんだん凝固する性質があることを知っておいてください。劣化と勘違いしてしまう方がたまにいます。手で温めればすぐにもとにもどります。気温に敏感。それは高濃度の純粋な天然のオイルの証。オイルが生きているからです。
最後にプレミアムタヌマオイルを紹介して終わりにします。
今、私が手にしているのは、「プレミアムタヌマオイル 月桃」という新製品です。タマヌオイルの効能に月桃の美肌促進作用が豊かに溶け込んだ美容オイルです。タマヌオイルの香りが少し苦手という方はこちらを。使い方など詳しい情報はHPをチェックしてくださいね。三輪さんからもひとことどうぞ。
「まだまだこれからのナウレですが、環境に負荷をかけず、誰ひとり取り残さない地域づくりを強固なものにしていけたらと思っています。商品は今、タマヌオイルの紫外線防止効果と抗炎症作用を生かして、肌にも海にも優しい日焼け止めを開発中です。海に流れても害にならない石鹸も作っています。小さな島の可能性を大きくしていけるよう頑張ります」(三輪)
日焼け止めと石鹸、いいですね。すでにハワイなど、諸外国のビーチでは使っていいものの規制が進んでいます。日本は残念ながらまだまだ。でも、もう人間だけが美しくなれればいい時代ではありません。地球も美しくしていかないと。
2021.7.20 (文/野村始子 写真提供/ヤラブの木)
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